本文へスキップ
HOME
運営事務局から お知らせ 問い合わせ リンク 戻る




バイクフォーラム「スーパーカブの世界は広がる」レポート



<MC>
只今より「スーパーカブの世界は広がる」と題しましてカフェカブ「バイクフォーラム」を開催致します。
今回は本田技研工業でスクーター、二輪EVの事業統括をされている今田典博(いまだ のりひろ)さんと、本田技術研究所・二輪R&Dセンターの金塚征志(かねづか まさし)さんをゲストにお招きしてお話を伺っていきます。
また本日は聞き手役として、造形社の女性バイカーマガジン「ガールズバイカー」の編集長・原田英里 (はらだ えり)さんをお迎えしております。
私はホンダスマイルの石原綾香と申します。
バイクに関しては素人ですが、知らないなりに頑張って進行役を務めさせていただきたいと思います。



今田典博(いまだ のりひろ)プロフィール

1983年、本田技術研究所に入社し、ジャイロシリーズ等の完成車まとめ役を担当。
その後、香港、タイ等への赴任と前後して、多くの東南アジア地域のスーパーカブシリーズの完成車まとめ役やスクーターPCXの開発責任者を務める。
2009年からは全世界のスーパーカブシリーズの開発責任者を務め、今回のグローバルカブシリーズでも開発責任者を務めた。
2012年10月より、本田技研工業でスクーター、二輪EV領域の事業取りまとめ役に就任。





金塚征志(かねづか まさし)プロフィール

1997年、本田技術研究所に入社し、コミューター領域のフレーム設計を主に担当。
Nプロジェクト在籍中にズーマー、バイト、ソロ等の開発に従事した。
その後、原宿のアンテナショップ「H-FREE」の立ち上げに加わり、常駐メンバーとしてマーケティングを担当する。
そしてPCXやブラジル向けスーパーカブ等の車体設計を経て、本邦初公開のコンセプトモデルを担当した。





原田英里(はらだ えり)プロフィール

2005年、出版社・造形社へ入社。
ミニバイクが好きだったこともあり、ミニバイク専門誌「モトモト」で編集スタッフとしてスタートする。
現在は女性バイカーに人気の月刊誌「ガールズバイカー」の編集長として多忙な日々を送っている。

<MC>
早速ですがもう気になっていらっしゃる方も多いかと思いますが、ステージ上になにやらカバーがかかっているバイクがあります。
これはなんと、今日こちらで初めて展示発表されるコンセプトモデルだそうで、本日のカフェカブミーティングにお越しの皆様にまず最初にお披露目したいと思います。
それでは今田さん、金塚さん、お願い致します


<今田> 
皆様、これがコンセプトモデルです。
のちほど、これについては金塚よりお話しさせていただきます。

  




<MC>
ありがとうございました。
今年の2月に「スーパーカブ110」、5月に「スーパーカブ50」、更に7月にPRO仕様と言うようにモデルチェンジが続きましたが、原田さんはどんな感想をお持ちになられましたか?。

<原田>
マスメディアでは「カブが54年目にフルモデルチェンジされた」という一種の驚いた感じで報道されていました。
今田さん、まず50年という長い期間、今までのカブというのはどういった考えで作られてきたものなのでしょうか?。

<今田>
今まで私たちは初代スーパーカブ以来の「使い勝手がよく、経済的でお求めやすい価格」というカブの基本テーマをはずさないように開発を進めてきました。
幸い、お客様からそれを認められて、今では世界中で作られ、販売されています。

<原田>
それでは今回のモデルチェンジの目的、狙いと言ったものは何だったのでしょうか?。

<今田>
今回のモデルチェンジの背景には、将来的な騒音や環境の世界統一規制や各国の規制に対応できるモデルを用意する必要がありました。
そこで環境規制だけではなく、各国で通用する、よりグローバルな進化したモデルとして「ニューベーシックカブ」というコンセプトで開発を進めました。
つまり生活する上でのより充実した性能、仕様、装備をお求めやすい価格で実現すべくスーパーカブ110に取り組んだわけです。
そして日本のスーパーカブ50も、これらの進化を取り入れるためにフルモデルチェンジしました。
その一方でリトルカブは、その可愛さが好評なので継続生産しております。

<MC>
ではモデルチェンジの狙いが分かったところで、今回のモデルのデザイン、エンジン、車体等について原田さんのほうから伺っていただけますか?。

<原田>
では、まずはデザインについてから、お聞かせください。

<今田>
今回のデザインは従来の使い勝手を守りながら現代のスタイル感覚にフィットすることを目指しました。
そのために「丸みのある四角」をメインのモチーフとして角形とか直線的でも丸みを持たせています。
それによりシンプル、フレンドリー、質実、といったイメージを表現しました。


<原田>
次にエンジンについてですが、エンジン特性等はどういう設定なのでしょうか?。

<今田>
エンジンは荷物を載せた時や坂を上る時の取り回しのしやすさを進化させるために、低中回転域を重視したトルク特性にしてそれに合わせてギアレシオを最適化しました。
それらにより、より乗りやすく、市街地での実用的な性能を上げることができました。

<原田>
最後に車体についてはいかがでしょうか?。

<今田>
車体については今回シート高をキープして足つき性を損なわないように配慮しながらも、ガソリンタンクの容量を600cc拡大しました。
また荷物を積んだ時も、より安心感のある走行のためにフレーム剛性を見直しサスペンション性能も向上させました。
なおホイールベースは20mm延長してあります。

<MC>
機械的な側面については、だいたい分かってきました。
価格については安くなったそうですが?。

<今田>
そうです、これまで述べたような進化を実現させる一方で、スーパーカブ110は今までより21,000円価格を下げ、スーパーカブ50は48,300円安くなり、よりお求めやすくすることができたと思います。


<MC>
ところで今田さんは現在、スクーター、二輪EVの事業統括というお立場だと伺いましたが、カブの開発責任者としてやってこられたことを振り返ってみていかがでしょうか?。

<今田>
日本と世界のお客様の使い勝手を考えながら、グローバルスタンダードな二輪コミューターとしてスーパーカブを刷新した、というのが私が開発責任者としてやった事です.
私は開発責任者の頃からカフェカブに参加させていただき、ビジネス車社としての実用性はもちろん、パーソナルユースのコミューターとして愛し続けてくださるお客様とお話しする機会をたくさんいただきました。
そんな中でスーパーカブの刷新を図ったら、次はよりパーソナルな使い方をメインとしたテーマも検討していきたいと思いました。
そして今回、検討中のコンセプトモデルを出展することができた次第です。
では、ここからはそのコンセプトモデルの担当者である金塚から説明させていただきます。

<金塚>
このコンセプトモデルは今回のカフェカブが、いわゆるワールドプレミアというのでしょうか?、初めての展示です。


<MC>
カフェカブも凄いステージに選ばれましたね?。
このモデルの名前はなんというのでしょうか?。

<金塚>
「クロスカブ」、CC110と名付けています。

<MC>
クロスとカブの頭文字を取ってCCとなるので、CC110というわけですね?。
金塚さんは、そもそもこういう物をどうやって思いつくんですか?。

<金塚>
先ほど今田も言っていましたが、新しいスーパーカブ110と50はホンダの二輪を代表するビジネスカテゴリーのモデルです。
だからその進化は当然荷物の積載とか坂道とかでも安心感のある乗り味を目指した、つまり市街地でのビジネスシーンを中心に想定した進化なんです。
よって、それを表現するデザインも実直というか、どちらかというと"マジメ寄り"だと私は思います。
でも、そういう進化の方向は当然ですし、スーパーカブというビジネス車を生産するメーカーとしての責務というか…。
そして、まさにそんな今田の仕事っぷりを私はすぐそばで見ていたわけですが、何かこう"ビジネス車としての進化"といってもそれは要は普通の使い方をする時にも嬉しい進化じゃないかと思ったんです。
そう思って改めてお客様の使われ方を見ても、必ずしもビジネス用途だけにとらわれずにメーカーが考える以上に、もっともっと広がりのある用途で多くのお客様が楽しんでくださっている。
考えてみればスーパーカブは過去からそういう幅の広い普遍的な良さをお客様に認め続けていただいている商品なんですね。
その辺が検討を始めた動機でしょうか?。

<原田>
なるほど、それは今日お見えになっているお客様を見ればよく分かります。
"カブで楽しく遊びたい"って感じでしょうか?。

<金塚>
はい、その通りです。
スタンダードなスーパーカブがあった上で、そこがこのクロスカブの"コンセプト"につながるんです。
"コンセプトモデル"とよく言いますが、原田さんのように笑顔でモデルに出会えた方にはコンセプトが実はもう伝わっているんです。
コンセプトは"想い"ですから、伝わると本当に嬉しいんです。

<MC>
クロスカブというネーミングですが、"想い"としてはプレイカブとかプレジャーカブとかでしょうか?。
ファンファンカブでは軽い…ですね?、パーソナルカブですし。

<金塚>
でも、そんな感じですよ。
実際は物を作る前に、これに関わるいろいろなノリの人達と思いを共有するためには、やはりコンセプトが必要なんです。
ではまず、車体を見ていきましょう。
CCDカメラを用意しました。
サイドカバーのステッカーに「THE CROSSOVER A LIFE&PLAY」と書いてありますが、これがコンセプトです。
日常と遊びの融合、架け橋。
クロスカブCC110。
進化した日常使いの性能、A LIFE。
スーパーカブの使い勝手はそのままに、よりパーソナルユースを念頭にした遊び心、つまりPLAYを融合させる。
そういう思いを込めて作りました。

<原田>
生活と遊びですか?。
スーパーカブ110との違うところを教えていただけませんか?。

<金塚>
「THE CROSSOVER A LIFE&PLAY」のA LIFEは今田が説明したスーパーカブと共有していますので、どんなところにPLAYを融合させたかを説明させていただきます。
私達の考えたPLAYの要素は、大きく三つのテーマから成っています。
一つ目は"クロスオーバースタイル"。
パッと見の印象を左右する要素です。
まずはカラーリングと、そのアレンジです。
サイドカバー等、スタンダード仕様でも色塗りされているパーツに加えてリアキャリアやヘッドライトステー等、鉄パイプのパーツにも色を反映して赤と黒のコントラストのある組み合わせでパイプでガードされた感のある無骨さとPOPな親しみすさを表現しました。

<MC>
クロスオーバースタイルは、まずは"色"ですね?。
原田さん、いかがですか?。

<原田>
確かに色でキャラって引き立ちますよね?。
私は"かわいいけど力持ち"みたいな感じがします。
似合うシーンは街中だけではなさそうな印象を受けました。

<MC>
さて、次のクロスオーバースタイルは?。

<金塚>
クロスカブのアイデンティティ"アソビ"を表現する"顔"の役割を果たすのが、この丸ヘッドライトです。
スーパーカブのヘッドライトが信頼感というかビジネスっぽい角だとするなら、こちらはもっと親しみやすい感じで丸にしたいなぁ、と思いました。
更にこのパイプワークでヘッドライトを囲うことでヘビーデューティな感じも演出しました。

<MC>
スタイル的にはタイヤの印象も違いますね?。

<金塚>
はい、タイヤとサスも違います。
前後クッションはスーパーカブPRO用を使用していますので、荷物を積んだ時のタフネスさは十分です。
きっとアソビの場面でも役立ってくれる時があると思います。
タイヤはスーパーカブPROの前後14インチから17インチにサイズアップしました。
"ちょっと未舗装路も〜"みたいな、より幅広いシチュエーションであそべそうなイメージを持たせています。
次は"週末、どこでもファンライド"というコンセプトで、乗っての印象に関わる要素です。
原田さんは職業柄スーパーカブ110には乗られたことがありますよね?。

<原田>
 はい、もちろん。

<金塚>
 それではこのクロスカブにも跨って印象をお聞かせいただけますか?。

<原田>
スーパーカブ110より更にゆったりした感じがします。
視界が広々している気もしますが、これはステージ上だからでしょうか?。

<金塚>
スタンダードなカブと比べるとシートのクッション厚を上げてありますから、その分だけ膝の曲りが少ないため
"ゆったり"と感じ、視線もその分だけ高くなっているはずです。
加えてハンドル幅も広くなっています。
その辺も"ゆったり"の秘密ですね。
だから、より長距離のライディングシーンにも向いているのではないかと思います。

<原田>
長距離ツーリングでポジションが楽なのはありがたいですね。

<金塚>
ファンライドにも色々あるのですが、ツーリングもその一つですよね?。
また、このクロスカブの場合は街中だけではなく、郊外のちょっとした未舗装路なんかにもフラッと迷い込んでみたくなるようなイメージを持たせました。
例えばちょっとした路面のギャップ等で車体を押さえたい時にもこの幅広ハンドルはより押さえが効きやすく安心感があるはずです。
ちなみにステップは可倒式にしてあります。

<原田>
スーパーカブの進化に、見て、乗って、のプレイを表現したのがクロスカブだということがよく分かりました。
跨ってみて、ちょっとワクワクしました。
まず目に入ってくるメーターの見え方からして既に違いました。
スーパーカブの優れた実用性がベースだからこそ、こういう広がりもまたすごく楽しいですね。

<金塚>
クロスカブの広がりって尽きないんですよ。
例えば長距離下道ツーリング等で大きな荷物を積みたい時にはPRO用の大きなキャリアも付きますので個人個人のパーソナルなシーンに応じた姿も可能だと考えています。

<原田>
楽しいですね。
会場の皆さんの愛車を見ても、それぞれのシーンが感じられますが、このクロスカブを見ながら皆さんも「私ならこうしたい、ああしたい」と思われているのではないでしょうか?。

<金塚>
実は私もこれを造りながらまったく同じことを考えていました。
先ほど、見て、乗って、のプレイをご紹介しましたが、プレイの三つ目があります。
今回のクロスカブの展示のみならず、私達がこのカフェカブにぜひとも参加させていただきたいと願った一番の動機をご紹介します。
それがこちらのクロスカブ・カスタマイズコンセプトです。
  
<原田>
もう一台あったんですか!、カスタマイズ車ですね!?。

<金塚>
(笑)スーパーカブをパーソナルユースと捉えた時、"より自分らしく"というカスタマイズのファクターは欠かせないと考えます。
こちらの赤いクロスカブをスタンダードと考えてみる。
クロスカブを検討しながら、自分達でカスタマイズ車も作ってしまったんです。

<原田>
ここまでくると「これ、遊ぶに使っちゃってください」って感じがしますね。

<金塚>
使い勝手や用途に沿ったカスタムだけではなく、クロスカブをベースに遊びに沿ったカスタムにトライしてみました。
ちょっと冒険っぽく、よりワイルドなトレッキングイメージがテーマです。
アップマフラーやスペアタンク、その他にもバインダー付フロントキャリア等、色々とアイデアは尽きないんですよね。

<原田>
ところで今田さんは、このクロスカブ・カスタマイズコンセプトをどう思われますか?。

<今田>
確かにパーソナルユースとは言いましたけど、何もここまで遊べとは言ってないんですよ。(笑)
ですが、こうやって出来てきた物を見て「そうか」と思いました。
自分のイメージした物に少しづつ近づけながら末永く楽しんでもらえるという事、この世界ももたスーパーカブの世界だよね、と思いました。


<原田>
そのお考えにはお客様の多くも頷けるところではないでしょうか?。


  


<MC>
さて、ここまで興味深いお話を伺ってまいりましたが、お時間が無くなってしまいました。
最後に本日のゲストの方々から会場の皆様へメッセージをお願いします。


<原田>
今回のカフェカブは最後までサプライズに次ぐサプライズで、私にとってもサプライズしています。(笑)

<金塚>
今日はカブファンの皆様に、どこよりも誰よりも早くクロスカブをご覧に入れる機会をいただきまして、本当に感謝しております。
ありがとうございました。
今後これら進化したスーパーカブも、ぜひ皆様の仲間に加えていただけるように頑張っていきたいと改めて思いました。
よろしくお願いします。

<今田>
今日はお招きいただき、自分の思いや考えを語らせていただき、お礼申し上げます。
また、これだけ多くのカブを見させていただき、皆様が本当に「自分のカブ」としてカブを愛していらっしゃる様子に感激しております。
開発者の一人として感無量です、ありがとうございました。
これからも継続して皆様に愛されるカブにしていかなければならないと、改めて感じた次第です。
この進化したグローバルカブに続いて、ビジネスのみならず、もっと幅広いフィールドにも、もっとパーソナルな世界にも、世界を広げたいと考えています。
これからもホンダのスーパーカブを末永くご愛顧いただけますよう、よろしくお願いします。

<MC>
ゲストの方々、ありがとうございました。
それではこれにてバイクフォーラム「スーパーカブの世界は広がる」を終了致します。
会場の皆様、、ありがとうございました。